徳原測量設計事務所

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「使っていない畑があるので、太陽光パネルを設置して売電したい」

最近、このような土地活用を検討される方もいらっしゃいます。

しかし、太陽光パネルは、土地を持っていれば自由に設置できるわけではありません。

東広島市では、2026年1月1日から新しい太陽光発電設備に関する条例が施行され、原則として10kW以上の地上設置型太陽光発電事業には、事前協議や近隣住民への説明が必要になりました。

また、土地の面積や地目、造成工事の内容によって、農地法や盛土規制法、景観条例など、別の法令による手続きも必要になります。

今回は、実際にありそうな相談を会話形式で紹介しながら、太陽光発電設備を設置するための手続きを解説します。

1.畑に太陽光パネルを設置するには許可が必要なの?

土地所有者:「東広島市に使っていない畑があるんですが、ここに太陽光パネルを設置したいんです。何か許可が必要ですか?」

測量設計の専門家:「はい。まず確認したいのは、発電出力が何kWなのか、土地の面積が何㎡なのか、そして農地としてどのような指定を受けているかです」

土地所有者:「発電出力は50kWくらいで、土地は1,000㎡ほどあります」

専門家:「それなら、少なくとも東広島市の太陽光発電条例に基づく手続きと、農地転用の手続きを検討する必要がありますね」

土地所有者:「50kWなら大丈夫だと思っていました。新しい決まりがあるんですね」

専門家:「そうなんです。2026年から東広島市では、原則10kW以上の地上設置型太陽光発電事業について、事前の届出・協議と関係住民への説明が義務付けられました」

この条例は、周辺地域の景観や環境を保全し、土砂災害などを防止することを目的としています。

なお、建物の屋根などに太陽光発電設備を設置する場合は、この市条例の対象外です。また、実質的に一体の事業については、設備を分けても出力を合算して判定する場合があります。

2.近隣住民にはどこまで説明する必要があるの?

土地所有者:「近所の人全員に説明しなければならないんですか?」

専門家:「全市民というわけではありません。条例で説明対象となる関係住民等の範囲が決められています」

具体的には、次のような方々が対象です。

① 事業区域の境界から300m以内の住民等

敷地境界から300m以内の区域に住んでいる方や、その区域を含む自治会・町内会の区域に住んでいる方などです。

② 事業区域の境界から50m以内の土地・建物所有者等

50m以内に土地や建物を所有している方や、対象区域内の道路・河川で定期的な清掃、草刈りなどの維持作業を行っている方も含まれます。

このほか、市長が必要と認める方も対象になります。

土地所有者:「300mというと、けっこう広い範囲になりますね。説明会を開く必要があるんですか?」

専門家:「必ず最初から説明会を開催するわけではありません。戸別訪問などによる説明が認められています。ただし、関係住民等から説明会の開催を求められた場合には、開催する必要があります」

説明の内容についても、あらかじめ市と協議し、説明結果を報告しなければなりません。

土地所有者:「近隣住民全員の同意が必要なんでしょうか?」

専門家:「太陽光発電条例では、関係住民等の理解を得るよう努めることが求められています。一律に全員の同意書を取得する規定ではありません。ただし、農地転用には別のガイドラインがあり、隣接農地所有者などの同意書の提出が求められています。ここは区別して考えましょう」

3.土地の面積によって必要な申請が変わる?

土地所有者:「土地が広いほど、手続きが増えるということですか?」

専門家:「そのとおりです。ただし、土地全体の面積だけで判断するわけではありません。造成面積や太陽光設備の築造面積など、法律によって判定する面積が異なります」

代表的な面積基準を整理してみましょう。

面積などの基準関係する法令・制度主な確認事項
面積に関係なく農地法畑を太陽光発電用地へ転用する場合、原則として許可または届出が必要
盛土・切土の面積が500㎡超盛土規制法一定の造成工事について許可が必要
工作物の築造面積が1,000㎡超など広島県景観条例対象地域での大規模行為の届出
農地転用面積が3,000㎡超農地法関係の審査農地転用の審査で追加の意見聴取が必要
森林の開発面積が5,000㎡超森林法対象森林で太陽光発電を目的とする林地開発許可
立地する都市計画区域と開発規模による都市計画法建築物等を目的とする開発行為に該当する場合、区域別の面積基準を確認

※上記は代表的な基準です。面積を超えれば必ずすべての許可が必要という意味ではありません。土地の区域指定や工事内容、設備の構造などによって判断します。

① 農地法:畑であれば小さな面積でも確認が必要

土地所有者:「500㎡くらいの小さな畑なら農地転用は不要ですか?」

専門家:「いいえ。通常の地上設置型太陽光発電に使用する場合、農地転用は土地の面積に関係なく問題になります」

自分が所有する農地を自分で転用する場合は農地法第4条、売買や賃貸借などを伴う場合は第5条の手続きを検討します。

市街化区域内の農地は原則として許可ではなく届出となりますが、それ以外の区域では原則として許可が必要です。

また、農用地区域、いわゆる「青地」に該当する場合は、農振除外が必要になることがあり、そもそも転用が認められない場合もあります。

土地所有者:「畑の種類によって、設置できないこともあるんですね」

専門家:「そうです。だから最初に農業委員会と農林水産課で調査することが大切です」

なお、パネルの下で農業を継続する「営農型太陽光発電」は、通常の農地転用とは異なり、支柱部分などの一時転用許可や営農計画の審査が必要になる制度です。

② 盛土規制法:造成面積が500㎡を超える場合は要注意

土地所有者:「畑が少し傾いているので、平らにしてからパネルを設置しようと思っています」

専門家:「その場合は盛土規制法の確認が必要になります。東広島市は市内全域が盛土規制法の規制区域です」

盛土や切土をする土地の面積が500㎡を超える工事は、原則として許可対象になります。

ただし、500㎡以下であっても、盛土で高さ1mを超える崖が生じる場合など、工事の高さや形状によって許可が必要になります。

土地所有者:「土地が1,000㎡あっても、土を動かさなければどうですか?」

専門家:「盛土規制法の許可は、単純な敷地面積では決まりません。実際にどのような造成をするかで判断するので、切土・盛土の計画を確認する必要があります」

東広島市では、太陽光発電設備工事の内容を確認するため、開発指導課への工事計画書の任意提出も案内されています。

③ 景観条例:1,000㎡を超える工作物などは確認

広島県の「ふるさと広島の景観の保全と創造に関する条例」も確認が必要です。

東広島市内の対象地域では、大規模な工作物の設置について、築造面積が1,000㎡を超える場合や高さが13mを超える場合などに届出が必要となります。

土地所有者:「畑が1,200㎡なら届出が必要ですか?」

専門家:「ここでいう1,000㎡は、単純な敷地全体の面積ではなく、工作物の築造面積を基準に判断するものです。設置計画図を作成して、都市計画課に確認しましょう」

また、広島県内では、地域によって景観形成地域と大規模行為届出対象地域などの区分があります。

東広島市でも、河内町などは適用される地域区分が異なるため、所在地を確認する必要があります。

④ 森林法:5,000㎡を超える森林開発

土地所有者:「畑の隣に山林もあるんですが、そこにもパネルを広げられますか?」

専門家:「山林の場合は森林法も関係します。2023年4月から、太陽光発電設備を目的として地域森林計画対象民有林を5,000㎡(0.5ha)を超えて開発する場合、林地開発許可が必要になりました」

5,000㎡以下であっても、森林の伐採に関する届出などが必要になる場合があります。

また、保安林などでは別の厳しい規制が適用されます。

⑤ 都市計画法:1,000㎡や3,000㎡という基準もある

都市計画法第29条の開発許可について、東広島市では、建築物等を目的とする開発行為に対して、次の面積基準があります。

市街化区域では1,000㎡以上、市街化調整区域では原則すべて、非線引き都市計画区域では3,000㎡以上などです。

ただし、ここには重要な注意点があります。

専門家:「一般的な地上設置型の太陽光パネルは、架台下を物品保管などに利用しない場合、通常は建築物に該当しません。そのため、敷地が1,000㎡や3,000㎡を超えるだけで、都市計画法第29条の開発許可が必ず必要になるわけではありません」

土地所有者:「なるほど。建物を建てる場合と太陽光パネルだけを設置する場合では違うんですね」

専門家:「そうです。設備の構造や付属建築物の有無を含めて判断する必要があります」

4.実際の申請はどのような順番で進めるの?

土地所有者:「必要な法律がいろいろあることはわかりました。何から始めたらいいですか?」

専門家:「最初にするべきことは、パネルを購入することでも、工事を発注することでもありません。土地にどのような法律が適用されるかを調べることです」

一般的には、次の流れで進めます。

  1. 土地の事前調査
    地番、面積、地目、農地の区分、都市計画区域、盛土規制、景観条例、森林法などを確認します。
  2. 農業委員会などへの事前相談
    農地転用の見込みや、農振除外・地域計画変更の要否を調査します。
  3. 現地測量と計画図の作成
    太陽光パネルの配置、敷地境界、排水施設、工事用道路、造成の必要性などを検討します。
  4. 東広島市への事前届出・協議
    太陽光発電事業実施概要届出書(様式第1号)などを提出し、市と協議します。
  5. 関係住民等への説明
    市と説明内容を事前協議したうえで、対象となる住民等への説明を行い、説明結果を報告します。
  6. 必要な許認可の取得と協議終了
    農地転用や盛土規制法などの手続きを完了させ、市から太陽光発電事業に関する協議終了通知を受けます。
  7. 工事着手・完了の届出
    協議終了通知を受けた後、工事着手届を提出して着工します。完成後も完了届が必要です。

土地所有者:「工事が始まってから申請するのでは遅いんですね」

専門家:「そのとおりです。条例では、協議終了通知を受ける前に設備の設置工事に着手してはいけないことになっています」

また、事業を変更した場合や廃止する場合にも届出が必要です。

5.近隣への説明では何を伝えればいい?

土地所有者:「近隣説明では、何を話せばいいのでしょう?」

専門家:「住民の方が心配するのは、単にパネルが見えるということだけではありません。実際には、雨水の流れや土砂の流出、草刈り、反射光などを心配されることがあります」

東広島市農業委員会のガイドラインでも、フェンス、雨水処理、除草作業、光の反射、騒音、振動、日照などについて説明することが求められています。

特に畑では、周囲に農業用水路や農道があることも多く、排水計画への配慮が重要です。

例えば、パネルを設置したことで雨水が一か所に集中し、隣の畑に流れ込んでしまうようでは、近隣トラブルにつながります。

土地所有者:「ただ説明するだけではなく、実際に問題が起きない設計が必要なんですね」

専門家:「そうです。測量で土地の高低差を把握し、必要に応じて排水計画を作成することで、近隣の方にも具体的に説明できます」

こうした準備が、円滑な事業実施につながります。

6.まとめ:最初の法令調査が太陽光発電事業の成否を分ける

土地所有者:「太陽光パネルを設置するだけでも、意外といろいろな手続きがあるんですね」

専門家:「そうですね。ただし、すべての計画で複雑な許可申請が必要になるわけではありません。土地の条件に合わせて、必要な手続きを整理することが大切です」

例えば、平坦な800㎡の畑に20kWの地上設置型太陽光発電設備を設置する場合、東広島市の太陽光発電条例に関する手続きや農地転用の確認は必要ですが、大規模な造成工事がなければ、盛土規制法の許可が不要となる可能性もあります。

一方、土地の面積が小さくても、農振農用地区域であったり、急傾斜地で大きな切土・盛土を行ったりする場合には、事業化が難しくなることがあります。

太陽光発電設備の設置では、土地を購入したり工事を契約したりする前に、法令調査と事前協議を行うことをおすすめします。

測量・土木設計の専門家に相談することで、必要な許認可や造成・排水計画を早い段階で整理でき、手戻りや想定外の費用を減らすことにつながります。


参考資料・公式リンク

このブログは2026年10月20日時点の情報に基づいています。個別の申請要否や許可の見込みは、土地の所在地・区域指定・設備構造・工事内容により異なるため、関係行政機関への事前確認は自己責任にてお願いします。