「市街化調整区域なので、大規模な事業用地として利用するのは難しい」
「第1種農地が含まれているため、農地転用はできない」
このような理由から、工場や物流施設などの計画を諦めている企業も少なくありません。
しかし、事業の内容や立地条件などによっては、「地域未来投資促進法」を活用することで、市街化調整区域や第1種農地を含む土地でも開発できる可能性があります。
今回は、東広島市において一般企業が計画している、約2.5haの「農産物物流センター」の事例をもとに、地域未来投資促進法と都市計画法第29条の開発許可について解説します。
今回の開発計画
今回進めている計画の概要は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発主体 | 一般企業 |
| 建築用途 | 農産物物流センター |
| 開発面積 | 約2.5ha(約25,000㎡) |
| 場所 | 東広島市 |
| 都市計画 | 市街化調整区域 |
| 農地 | 第1種農地を含む |
| 開発手続 | 都市計画法第29条による開発許可 |
| 現在の状況 | 東広島市開発指導課等との事前協議を実施 |
特に大きなポイントとなるのが、「一般企業」「市街化調整区域」「第1種農地」「約2.5ha」という条件です。
通常の開発案件と比べても、クリアしなければならない土地利用上のハードルが非常に高い計画です。
市街化調整区域では「29条」だけでなく「34条」が重要
都市計画法第29条は、開発行為について許可を受けるための基本的な規定です。
しかし、市街化調整区域の場合はそれだけではありません。
東広島市も、市街化調整区域で開発許可を受けるためには、原則として都市計画法第34条各号のいずれかに該当する必要があるとしています。東広島市「開発許可制度の概要」
つまり、
「造成計画が技術基準を満たしている」
というだけではなく、
「そもそも、この場所にこの施設を立地させることが認められるのか」
という立地上の問題をクリアする必要があります。
ここで今回、大きなポイントとなったのが「地域未来投資促進法」です。
地域未来投資促進法とは?
「地域未来投資促進法」は、正式には「地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律」といいます。
地域の特性を生かして高い付加価値を生み出し、その経済効果を地域へ波及させる事業を支援する制度です。
一定の要件を満たして「地域経済牽引事業計画」の承認を受けるなど、所定の手続きを進めることで、土地利用についても重要な支援措置を受けられる場合があります。
経済産業省は、一定の条件を満たす施設について、市街化調整区域における開発許可を「原則として許可して差し支えないもの」とする取扱いを示しています。経済産業省「地域未来投資促進法に基づく支援措置」
第1種農地についても可能性が生まれる
もう一つの大きな問題が「農地」です。
特に第1種農地は、良好な営農条件を備えた農地として、農地転用が原則として厳しく制限されています。
ところが地域未来投資促進法では、基本計画における重点促進区域の設定や市町村による土地利用調整計画など、所定の土地利用調整手続きを経ることによって、第1種農地等についても農地転用につながる可能性があります。
したがって、この制度は単に「都市計画法29条の開発許可を取りやすくする制度」ではありません。
農地と都市計画という、事業用地開発における2つの大きな土地利用規制を調整する仕組みとして考えることが重要です。
ただし、「未来法を使えば開発できる」わけではありません
ここは特に注意が必要です。
地域経済牽引事業計画の承認を受ければ、自動的に都市計画法第29条の開発許可や農地転用許可が下りるわけではありません。
概念的には、
地域未来投資促進法による土地利用調整
↓
地域経済牽引事業計画等の手続
↓
農地関係の手続
↓
都市計画法第29条の開発許可
↓
造成・建築
というように、関係する制度を一つずつ整合させながら進めていく必要があります。
29条開発許可についても、道路、雨水排水、調整池、擁壁、給排水などの技術基準を満たす必要があることに変わりはありません。
約2.5haの開発だからこそ、事前協議が重要
今回の農産物物流センターは約2.5ha、つまり約25,000㎡という大規模な計画です。
この規模になると、
- 接続道路
- 場内道路
- 雨水排水
- 調整池
- 上下水道
- 造成高
- 擁壁
- 農地転用
- 周辺農地への影響
など、多くの項目を総合的に検討しなければなりません。
そのため今回の計画でも、正式な29条開発許可申請を提出する前の段階から、東広島市の開発指導課をはじめとする関係部署との事前協議を進めています。
大規模開発では、「設計を完成させてから行政に相談する」のでは遅い場合があります。
候補地の選定段階から行政と協議し、地域未来投資促進法が利用できる事業なのか、都市計画・農地・道路・排水などの条件をクリアできるのかを確認していくことが非常に重要です。
東広島市でも実際に地域未来投資促進法が活用されている
地域未来投資促進法は、東広島市にとっても現実的な企業立地施策の一つになっています。
東広島市は2026年7月、八本松町吉川地区について、地域未来投資促進法に基づく「地域経済牽引事業」を実施する民間事業者の募集を開始しています。
選定された事業者が地域経済牽引事業計画を作成し、広島県の承認を受けて事業を進める仕組みです。東広島市「吉川地区における地域経済牽引事業」
東広島市においても、同制度を活用した産業用地確保が実際に進められていることが分かります。
まとめ|市街化調整区域だからといって、最初から諦める必要はない
市街化調整区域や第1種農地では、一般企業による工場・物流施設などの開発は大きく制限されます。
しかし、地域経済への波及効果が期待できる事業で、立地条件や事業内容などが制度の要件に合致すれば、「地域未来投資促進法」という選択肢があります。
今回の東広島市における約2.5haの農産物物流センター計画でも、この制度の活用を前提として行政との協議を進めています。
重要なのは、
「この土地で29条開発申請ができるか」だけを見るのではなく、都市計画・農地・地域未来投資促進法を一体として検討することです。
特に市街化調整区域で工場、物流施設、研究施設などの大規模開発を検討する場合は、土地を購入してから判断するのではなく、候補地の段階で行政との事前協議を行うことをおすすめします。