1. 特定盛土規制法が必要になった背景の事件について
令和3年7月に静岡県熱海市で土石流災害による被害がありました。その際、死者・行方不明者27人となる甚大な被害が発生しました。この災害は台風が来ていたことに加え、山の上の方で土木業者が不当に盛土していたことが原因となって多くの人が亡くなりました。
静岡県も事前に危険性を認識していましたが、それを規制する法律がなかったため、危険な盛土を取り除くよう要望するだけで、それに対応しない業者に対して有効な対策を取ることができませんでした。
このような事件を踏まえて、それまで宅地造成等規制法で対応できなかった盛土に対応したのが今回の主な変更点になります。
下記は盛土が取り除かれた後の様子がわかる動画です。
2. それまでの宅地造成等規制法で対応できなかった理由
宅地造成等規制法では、「宅地造成規制区域」が都市計画区域内に設定されていました。主に住宅地で山に近いところなど、崖崩れが起きそうな場所について盛土を規制、または盛土する場合は適切な安全対策がされている擁壁等の設計をしていないと工事許可しないものでした。
しかし、今回の熱海市の盛土をしている箇所の写真を見ると、明らかに山の上の一軒家の横に不必要な盛土をしている様子が確認できました。
これは工事主は盛土だと主張したようですが、産業廃棄物など本来山に捨ててはいけないものを埋めて隠しているようにも見えます。そしてこの区域は宅地造成等規制区域外でしたので、役所の方も知っていながら、取り除くようお願いすることしかできず、そのまま放置して大規模な災害、人命まで失うという大きな事件となりました。
3. どのような地域が対象になったのか
これを踏まえて、特定盛土等規制法において既存の住宅地が山に近い場所でなく、幅広い範囲において盛土を規制する区域が定められるようになりました。
具体的には山の山頂などあるいは海に近い海岸線の平地部においても、幅広く区域を指定するように国土交通省の方から関連市町村に指導がありました。その結果、この特定盛土等規制法の範囲は非常に幅広く設定されています。人が住まない渓流や山奥なども対象区域となっています。
4. どのように条件が変更になったのか
条件としては今までの宅地造成等規制法の盛土の条件に加えて、盛土高5m以上になるものや、盛土面積が1500m²を超えるもの、また堆積する土砂の盛土が3000m³を超えるものは、この特定盛土等規制法に該当することになります。
詳細についてはメールにてご相談ください。
5. 開発申請時における変更点について
特定盛土等規制法については、その盛土高によって付近に影響があると思われる住民に説明会をしなければならないこと、そして計画内容を記した書面を配布すること、工事内容を住民が閲覧できるようにすることが定められています。またそれと同時にインターネットでも閲覧できるようにするということが定められています。
またこの申請をする前に住民の周知が必要ですので、周囲の住民の認印等の書類が必要になり、開発申請にかかる時間が長くなることが想定されます。
6. 開発工事期間中の変更点
工事の期間中においては、基礎排水溝など盛土の排水に関する工事は完了し、4日以内に中間検査を受けなくてはいけないことになっています。
これは少し専門的になりますが、大きな盛土をする時には透水管と言って土の中に流れる水を集めて一定の枡や排水溝に排水できるような処理をします。今までは写真を撮って工事完了後の完了検査についていたわけですが、この法律が施行されてからは、工事の中間検査を受けなくてはいけません。基礎排水溝の工事が完了して4日以内です。その中間検査完了後でないと工事が続けられません。ですから開発工事期間が延びることが想定されます。
このような宅地の開発について手間がかかるようになりました。
徳原測量設計事務所では当該開発申請も行っております。なんなりとご相談ください。