徳原測量設計事務所

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☔️ 土木設計のキホン:そのパイプで雨水は流れるか?

こんにちは!トクハラです。今日は流量計算の基本的な流れを考えてみたいと思います。

サンプルとしてVP150の管渠(勾配0.5%)が、集水面積0.079haの雨水を排水できるかどうかの検討をしてみたいと思います。

これは、「パイプが流せる量」 と 「流れ込んでくる雨の量」 の対決です。

パイプが勝てば(=パイプが流せる量の方が多い)、設計OKとなります。

ステップ1:パイプが持つ「流下能力(Qc)」を計算する(マニング公式)

まず、VP150(勾配0.5%)のパイプが、満水(パンパン)の状態でどれだけの水を流せるか、その「最大能力(Qc)」を計算します。

ここで使うのが「マニング公式」です。

マニング公式(流速)

\(
V = \frac{1}{n} \times R^{\frac{2}{3}} \times I^{\frac{1}{2}}
\)

流下能力

\(
Qc = A \times V
\)

難しそうに見えますが、パーツに分ければ簡単です。

  • Qc:求めたい「流下能力」(m³/s)
  • A:水の断面積(m²)。VP150(内径0.154mとします)が満水なので、円の面積です。$A = (\pi \times 0.154^2) / 4 \approx 0.0186 m^2$
  • V:水の流れる速さ「流速」(m/s)
  • n:粗度係数。パイプの「ツルツル度」です。VP管(塩ビ管)は非常にツルツルなので、0.010 を使います。
  • I:勾配。今回は 0.5% なので、計算に使う数値は 0.005 です。
  • R:径深(けいしん)。満水の円管の場合、単純に「直径の4分の1」です。$R = 0.154 / 4 = 0.0385 m$

これをマニング公式に当てはめて、まず流速 $V$ を計算します。

\(
V = \frac{1}{0.010} \times (0.0385)^{\frac{2}{3}} \times (0.005)^{\frac{1}{2}}
\)

\(V = 100 \times 0.1136 \times 0.0707
\)

流速(水の速さ)がわかったので、能力 $Qc$ を計算します。

\(Qc = A \times V = 0.0186 m^2 \times 0.803 m/s\) \(Qc \approx 0.015 m^3/s\) \(\frac{1}{2}\)

【結論1】

VP150(内径154mm)、勾配0.5%のパイプは、毎秒 0.015 m³ の水を流す能力があります。


ステップ2:土地から流れ込む「計画流出量(Qp)」を計算する(合理式)

次に、対戦相手である「流れ込む雨の量(Qp)」を計算します。

ここで使うのが「合理式(ごうりしき)」です。

合理式

\(Qp = \frac{1}{360} \times C \times I \times A
\)

  • Qp:求めたい「計画流出量」(m³/s)
  • C流出係数。降った雨のうち、どれだけが浸み込まずに流れ出すか(0〜1)。
    • (例:屋根やアスファルトは 0.9〜1.0、芝生や畑は 0.1〜0.3)
  • I降雨強度(mm/hr)。設計で想定する最大の雨の強さ。
  • A:集水面積(ha)。今回は 0.079 ha ですね。

ステップ3:最終チェック!パイプの能力は足りるか?

ステップ1とステップ2の数値を比べます。

\(
Qc = (0.015 m³/s) \geq Qp (合理式で計算した値)
\)

となればOKです。

ここが重要ですが、C と I の値がわからないと、Qpが計算できません。

Cと I は、設計対象地の状況や、設計基準(どのくらいの豪雨を想定するか)によって決まるります。

東広島市の場合 開発地Cの流出係数0.9 降雨強度 114 mm/h

試しに計算してみましょう

【例1】もし C=0.9(ほぼ舗装)、I=100 mm/hr(かなり激しい雨)と仮定すると…

\(
Qp = \frac{1}{360} \times 0.9 \times 100 \times 0.079
\)

\(
Qp \approx 0.0198 m^3/s
\)

この場合、

パイプの能力 (Qc) 0.015 m³/s

流れ込む雨 (Qp) 0.0198 m³/s

となり、Qc < Qp なので、VP150では能力不足です。

【例2】もし C=0.6(半分くらい緑地)、I=100 mm/hr と仮定すると…

\(
Qp = \frac{1}{360} \times 0.6 \times 100 \times 0.079
\) \(
Qp \approx 0.0132 m^3/s
\)

この場合、

パイプの能力 (Qc) 0.015 m³/s

流れ込む雨 (Qp) 0.0132 m³/s

となり、Qc > Qp なので、VP150で排水可能です。

まとめるとポイントは1つ

流量計算とは、「パイプが流せる量」 と 「流れ込んでくる雨の量」 の対決です。

パイプが勝てば(=パイプが流せる量の方が多い)、設計はOKとなります。